アクアポニックスについて②

アクアポニックスについての説明の第2回目ですが、まだ本題に入れません(笑)

今回は前回触れた「有機農法(有機栽培)」についてです。
まず有機農法の定義ですが、法律(有機農業の推進に関する法律)において「科学的に合成された肥料及び農薬を使用しない」及び「遺伝子組抱え技術を利用しない」こととされています。
一方で「慣行農法」とはそのような制限なく、農薬・肥料を有効に活用して持てる農地で収穫量の最大化を図る農法と言えます。前回も書きましたが、どちらが良いとかいうことはありません。

では「有機」とは何かということですが、通常は有機肥料のことを指します(「有機農薬」は一般的ではありません)。有機肥料とは生物由来の資源を原料とする肥料で、一般的には牛・豚・鶏といった動物の排せつ物から作られた堆肥をイメージされることが多いでしょう。ここで良く勘違いされがちなのですが、植物は動物の排せつ物から直接栄養を吸収できるわけではありません。動物と植物の共存の間には「微生物による分解」という作用が必要となります。

微生物が動物の排せつ物を分解することによって、植物が栄養として吸収できる状態になるので、どうしても肥料の効き方がゆっくりでかつ人にはその時期や量などをコントロールできません。一方の化学肥料はすでに植物が吸収できる状態になっているので、投与すれば直ぐに効き目が表れます。野菜の栽培には「肥料を効かせたいタイミング」があるので、化学肥料を使った方が野菜の栽培が効率的にできるわけです。

さて、以上を踏まえた上で、ここで水耕栽培について触れておきます。
水耕栽培では水を流したり溜めたりするための人工的装置が必要となります。その基本的な構造としては、野菜を植える栽培槽、液肥などを投与したりするための溶液槽、水を流すためのポンプ、水に空気を送るためのブロア(いわゆるブクブク)になります。

ここに堆肥のような固形物を入れてしまうと直ぐにポンプ等が詰まりますし、水が腐敗する原因となりますので、水溶性の化成肥料や液肥を使うことになります。水耕栽培にも使える有機肥料がない訳ではないのですが、そもそも限られた農地でより高い生産性を求めて、安くない初期投資をかけて水耕栽培を導入する以上(水耕栽培の欠点の一つ)、そこには肥料の効きが良い化成肥料が選ばれるのは当然といえば当然です。ですので、水耕栽培農家は概ね慣行農法を採用しており、「水耕栽培=慣行農法」という認識が定着しています。

 

この常識に一石を投じるのがアクアポニックスです。アクアポニックスのシステムでは微生物の働きを促す機構を含むため、水耕栽培での有機栽培を実現しています。次回はいよいよアクアポニックスについて説明します。

2022年01月27日