アクアポニックスについて③

さて、3回目にしていよいよアクアポニックスの本題に入ります。

とは言え、この話は農業に詳しい人よりもアクアリウム(魚の飼育をする趣味)をする人の方が馴染みがあると思います。かくいう私も、農業を職業とする傍らアクアリウムの趣味(カクレクマノミ等の海水魚)があり、そちらの情報収集からアクアポニックスに出会ったという経緯があります。

動物の排せつ物に含まれる尿素からはアンモニアが発生します。アンモニアはそのままでは生物にとって有害な物質なのですが、窒素の元となる物質でもあります。窒素はリン酸、カリウムと共に「肥料の三要素」と呼ばれる植物栽培にとって最重要の成分です。このアンモニアを窒素に変換することを「硝化」と言い、アクアリウムでは水のろ過システム内で行われています。

硝化は2種類の微生物が行います。まずアンモニアをニトロソモナスという微生物が亜硝酸塩に変えます。この亜硝酸塩もそのままでは魚にとって有害となりますが、次にニトロバクタ―(ニトロスピラ)という微生物が亜硝酸塩から硝酸塩に変えます。これは魚にとって少量なら無害ですが、水槽内に過剰に蓄積すると有害になります。硝酸塩はこれ以上は分解されないので、何もしなければどんどん貯まってしまいます。そこでアクアリウムでは定期的な水替えをすることで解決しています。

一方のアクアポニックスでは水替えは必要ではない、というか何もしなくて良いです。
なぜなら硝酸塩とは硝酸態窒素とも呼ばれるもので、植物が窒素として吸収してくれるからです。前述の通り窒素は植物の栽培に欠かせない成分なので、成長に合わせてどんどん使われます。これにより、硝酸塩がなくなった水はそのまま魚の飼育水として再利用できます。これが「魚を飼うと野菜が育つ」、アクアポニックスの原理です。

アクアポニックスを最初に知った時、魚に餌をあげるだけで野菜ができる、何だか「風が吹けば桶屋が儲かる」みたいな話だな、と思ってしまいました(笑) でも、きちんと化学的に証明できる栽培方法なんです。
どうです? 夢がありませんか?

 

2022年01月28日