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令和6年稲刈り開始

お盆の頃に4連続で日本に近づいてきた台風は全て当地を避けていき、被害どころか雨風すらほぼない状態で済みました。(東北では被害が出ましたが。)今年はいつもに増して時間が経つのが早く感じ、ついこの間田植えが終わった気がするくらいなのに、もう稲刈りの時期になりました。

そんな盆明けの8月22日、いよいよ稲刈りが始まりました。刈り初めのコンバインに付き合ってトラブルに会い、摺り始めの籾摺りに付き合ってトラブルに会い、初めからぐったり疲れました。歳のせいか年々きつくなってきたなと感じており、この先が思いやられます。

 

思えば今年は田植え頃の春先は水不足が叫ばれ、先が思いやられましたが、梅雨の期間には大雨は無かったけどトータルとしてそれなりの量が降ったおかげで水不足は解消し、梅雨明け後は暑い暑いとは言いつつも例年のような35℃越えの猛暑日はあまりなかったので、結果的には去年のような質の低下にはならないのではないかと期待しています。(収量は刈ってみないと分かりませんが)

世間(特に都会)では「米不足」とかでスーパーにも売っていないようで、その理由を説明するYouTube動画もありますが、実際の所はよくわからないです。ただ、会社の古米は全て売れてしまった模様です。


今これを書いている8月26日には、西日本に台風が上陸しています。コース的にはこちらにも来るようですが、実際にどれほどの雨・風があるのかは分かりません。天気予報は見るたびにコロコロ変わり、最近は全く信用できない状況です。稲刈りが始まったばかりですから、被害がないと良いのですが…


2024年08月26日

「アクアポニックス・陸上養殖設備展」に行きました

2024年7月24~26日の3日間、東京ビックサイトにおいて「アクアポニックス・陸上養殖設備展」が開催されました。私がアクアポニックスの世界にハマって約5年経ちますが、あの頃に5年後にあのような大きな会場で「アクアポニックス」の名を関したイベントが行われるとは思っていませんでした。それだけ、アクアポニックスの注目度が上がっていることが感じられますね。

そこでは水耕栽培、陸上養殖、アクアポニックス関連の商品展示の他、多数の有識者の講演が行われました。私は㈱アクポニの濱田さんの講演をメインイベントとして、最終日の26日に参加することにしました。

朝一番の新幹線で東京に行ったので、少し早めにビックサイトに着きました。考えてみれば、ビックサイトの建物に入るのは初めてかな? 現場自体は1999年、LUNA SEAの10万人ライブ以来かもしれません。あれからもう四半世紀か… 

展示品については、施設園芸でのスマート農業対応の商品(ハウスの自動化・環境データなど)が多かったと思います。表題にあった陸上養殖やアクアポニックスそのもののブースは限られていましたが、共通して使えるものなので、物足りなさみたいなものは感じませんでした。濱田さんの講演も大変盛況で、アクポニさんのブースは常に多くの人が集まっていたので、アクアポニックスへの関心の向上は確実なものだと思われます。

私としては「アクアポニックスに使えるか」と「自分の環境で使うか」の視点で見ていたので、全てのブースの商品を詳しく見たわけではありませんが、その中でもいくつか気になったものがあったので、それについてはYouTube動画でレポートしているのでそちらをご覧ください。

#51 施設園芸・植物工場展(GPEC)を見学しました( https://youtu.be/L5lrtN3y-us )

 

そんなわけで短い滞在でしたが、充実した日になりました。アクポニさんでは海水での設備を設置したということだったので、またいずれ藤沢に見学に行きたいと思います。

 


2024年07月28日

令和6年田植えほぼ終了

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5月31日、ようやく今年の代掻きが終わりました。田植えもそろそろ終わります。

(写真は最後の代掻きが終わった時の様子)

山間部ではこの冬の小雪による水不足が深刻という話を聞きますが、この辺では何とかなりました。ただ、ポンプ場の水を見ると例年よりはるかに少ないので、梅雨の時期にしっかり降ってくれないとまずいことになりそうです。去年のような状況にはならないと良いのですが…

 

6月の1日2日は土日なので久しぶりにゆっくりできるかと思いきや、今月の土日はことごとく消防団のイベントが入っており、月曜の今日が本当に久しぶりの休日。田植え期間中でもコツコツとハウスの仕事はしていましたが、これでようやくまとまって仕事が出来そうです。あと、田植え前から作っていた動画をそろそろ完成させて、一カ月以上更新できていない状態を改善したいし…、などとやりたいこと、やらなければいけないことがたくさん頭に浮かびます。

さて、どこから手を付けようかと思っていたら、早朝に緊急地震速報が鳴り響き、震度4の地震。元日の能登半島地震と同系統の地震のようですが、ここまでの揺れは半年ぶりです。幸い被害らしい被害はありませんでしたが、気持ち的に出ばなをくじかれた感じ。

 

時間はあるので、ゆっっくりやりましょうか……

2024年06月03日

小布施おさかな菜園に見学に行きました

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メディアベットの復旧がひと段落した3月中旬、長野県にある「小布施おさかな菜園」さんに見学に行きました。こちらのオーナーの飯田さんは以前うちのハウスを見学に来られた方で、その後実際にハウスと施設を建設に着手し、昨年10月頃完成したそうです。それで年末あたりに一度ご招待いただいたのですが、これから雪の降る時期になるということで、雪が収まる3月頃に約束をさせて頂いていました。

 

見学の様子は動画にしたので、詳細はこちらでご確認ください。

https://youtu.be/rGjYqFVg5j8

 

うちより大きな規模で真新しい施設、若々しいティラピアとチョウザメ、元気に育つ野菜たち。

うって変わって壊れた施設、育たないほうれん草、魚の死骸ばかりを見続けていたせいか、正直自信が無くなってきていた頃だったので、余計に「生命力」みたいなものを感じました。

 

来襲からもう4月。長かった「冬休み」が終わり、稲作の仕事がまた始まります。地震の片づけはほぼ終わり、ほうれん草は全て植え替えます。心機一転、やわやわとやっていこうと思います。

 

2024年03月26日

メディアベット復旧

前回からほぼ一ヶ月が過ぎ、もう3月も半ばになりました。

2月中は暖冬よろしく雪が少なくて天気の良い日も多かったのに、3月に入ったら給に雪が積もったりしました。この辺は4月でも降るときは降りますが、3月にもなれば除雪しなければならないほど降り積もることは稀なので、あの日は完全に油断していました。とはいえ、3月も半ばとなると気温も10℃を超える日が増えるのに反比例して、予報に雪マークがつくことが減っているので、いよいよ春らしくなっていくことでしょう。

 

メインシステム復旧から約2カ月、コツコツと作業を進めた結果、ようやく完全崩壊したメディアベットがほぼ復旧しました。この作業の様子については現時点で3回まで動画にしています。

 

メディアベット復興編① https://youtu.be/_z-e-yS2x9M

    〃     ② https://youtu.be/CD0zvWJak-U

    〃     ③ https://youtu.be/Zo1lW7IZH3Y

 

作業の細部は動画を参照して頂くとして、以前使っていた資材の多くが流用できたので新たに購入した資材は少なく済みんだので、最終的には時間はかかったけどお金は余りかけずに済みました。

復旧に先立ち「どうせやるなら前よりグレードアップしたものにする」と宣言し、メインシステムは去年の状態より改善したと申し上げましたが、メディアベットについても以下のように改善したと思います。

 

①給排水管ともに配管ラインの簡素化と排水管の厳密な高さ調整により、水流の安定化が向上

②ベットの高さを下げたことにより足場板が不要となり、作業が効率化

③小さいプラ舟2つから大きいプラ舟1つ(サイズは同じ)に変更したことで、配管を簡素化

④1つのプラ舟に1品種作付から、3つのプラ舟に1品種にする(プラ舟9つで3品種)ことで

 栽培量が増加することにより、販売の安定化を企図

 

特に④に関してはあまり売れない品種を今後どうするか、逆に売れる品種の収穫量が確保できないという悩みがあったので、今回の件で帰って解決できるかもしれません。

では何を植えるかについてですが、1つは生き残ったペパーミントを3つに株分けして移植した様子は動画で紹介しています。残り2つについては、売り方のコンセプトと共に今後発表する予定です。

 

2024年03月15日

メインシステム復旧

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あの地震からあっという間に一カ月が経ち、2月になっていました。

地震による被害の中で取り急ぎ復旧しなければならなかったのが、魚タンクの再設置でした。

魚タンクの傾きは地震の前から発生していましたが、地震によって傾きが大きくなり、水が送れなくなったことから、メインシステム自体が稼働できなくなってしまいました。

この被害の復旧は急務だったので地震翌日から準備を始め、予報の天気が良かった5日にタンクの水抜き、魚の移動、タンクの撤去、地盤の整備、タンクの再設置という本格作業を行う計画にしました。こちらの作業状況については、前中後3編で動画を配信しましたので詳しくはこちらをご覧ください。

 

前編 https://youtu.be/nv0_M9rzQYE

中編 https://youtu.be/UViKQds985o

後編 https://youtu.be/Jmcqm-Wk2zw

 

今回の地震で被った被害は、見た目は派手でしたがよくよくみると再利用可能な資材が多く、復旧には時間がかかるけどお金はそれほどかからないと考えていました。それについては今も変わりませんが、今のところメインポンプの買い替えが最も単価が高くなると思われます。それでも定価よりもだいぶ安く手に入ったし、注文の翌日に届いたのは驚きでした。交換したポンプは異音はするものの機能は生きているので、予備品として取っておいてあります。まぁ、最初の設置から約5年、毎日動いてくれたものですから、そろそろ交換時期と言えなくもないです。

 

魚タンクついても地震の前から傾きがあったのは承知していましたが、これを直すのは大変だということでだましだましやっていたのが、地震によって直すしかなくなり、今では傾きがほぼなくなりました。これによってタンク内の水位(水量)も安定したし、フタの座りも良くなったので保温効果も高くなったと思います。

 

それらのことから、結果的にはメインシステムの状態は去年よりも大きく改善しました。

あとは育てているほうれん草が良くなってくれればいいのですが、あまり状態が良くないのが気になります。正直言うと、今のところ原因が分かっていません。どうしたものか…

 

現在は完全に崩壊したメディアベットの復旧に当たっています。

こちらの作業状況も、随時動画を上げていく予定です。

 

 

 

 

2024年02月02日

令和6年は試練の年?

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明けましておめでとうございます、と心からお祝いできない状況ですね。
まずは能登半島地震で被災された方々にお見舞い申し上げます。


当地は能登半島より距離はあるものの、震度5強という今までで最も強い地震を受けることになりました。これまで中越地震、中越沖地震、東日本大震災など、震源が近い大きな地震では震度5弱が最大で、大きな揺れは感じたものの直接的な被害は受けなかったのですが、今回はそれを上回る揺れによって被害が生じてしまいました。幸い命に関わる被害ではなかったものの、農場に被害が出てしまい、生産活動を止めざるを得ない状況になっています。
まず、アクアポニックス設備の核となる魚タンクが大きく傾いてしまいました。 地震により中の水が大量にあふれてしまい、主に砂で作った地盤があふれた水によってえぐれて流れてしまったことが原因です。幸い、魚たちは生存していてくれましたが、現状は水を循環することができない状態であり、現在栽培しているほうれん草に水を送ることができていません。
次に、主にミントを栽培していた自作の棚が地震の揺れで倒壊してしまいました。 それこそ完全に崩壊してしまったので、すぐには復旧できない状況です。


今回の地震による被害の大きなものはこの2つです。差し当たり、魚タンクの復旧をしようと考えていますが、そのためには一度すべての水を抜いて魚を移動し、タンク自体も一旦撤去して地盤の整地を行う必要があります。大がかりな作業となりますが、これをやらなければ始まらないのでがんばります。
前回、ハーブの資格を取得したという報告をしたので、年明けからそちらを中心に栽培や活用情報を発信しようと考えていましたが、こんなことになるとは思ってもみませんでした…

 

※被害の詳しい状況については動画を配信しているので、ご興味のある方はご覧ください。

https://youtu.be/Pm9lQgPe3ro

2024年01月04日

動画配信1周年と資格取得

本日で動画配信開始から1年が経ちました。これまで28本の農場関係の動画と、実験的に周辺地域の景色だけを流す動画を1本配信してきました。前にも書きましたが、開始当初は「一年経っても登録者が一桁という可能性が十分ある」と思っていましたが、現時点で112人となっており、誠に有難い次第です。

言ってしまえば、ほぼほぼ自己満足と活動実績の証拠のための動画を作ってきまして、まだまだ編集技術も未熟ではありますが、これだけの登録者がついて頂いたたからには、今後は視聴者の皆様にも少しは有益な情報をお渡しできるような内容にしていきたいと考えております。

 

動画の件もそうですが、間もなく開業から2年を迎えつつある今日に至っても厳しい事業の状況を打開するため、この度「ハーブインストラクター」と「メディカルハーブカウンセラー」の資格を取得しました。

ハーブインストラクターは、ハーブを生活に生かし、豊かな生活を促進させる知識・技術を持つ人へ認定される資格で、日本安全食料料理協会(JSFCA)が発行しています。一方、メディカルハーブカウンセラーは、ハーブによるリラックス効果・リフレッシュ効果・デトックス効果など、ハーブの効能に対しての知識を持ち合わせ、ハーブを用いたカウンセリングを行う技術を持ち合わせた人へ認定される資格で、日本メディカル心理セラピー協会(JAAMP)が発行しています。似たようで微妙に違いがあるこの二つの資格ですが、ハーブに関しては他のもたくさんの資格があるので、その細かい違いはこの際は気にせず、「ハーブに関する意識を持っている人」と捉えて頂ければと思います。

なぜハーブなのかという話ですが、これまでアクアポニックスで様々な植物を栽培してきましたが、栽培管理と植物の状態をみると特にハーブ類との相性が良いと感じてきました。一方で消費者側のニーズとしては、コロナ禍を経て健康志向が更に強くなったと感じています。その二つのニーズを満たすため、これまで以上にハーブに力を入れていきたいと思いました。そのための資格取得です。

とはいえ、ハーブの世界は余りにも広く、資格取得は入口に過ぎません。まだまだ知識・技術は未熟ですが、来年はハーブ関連の商品開発と栽培を進めるとともに、そちらの情報発信を動画や別のブログの方でやっていきたいと思います。

 

 

2023年12月08日

稲刈り終了、そして冬へ

聞くところによると10月14日、今年の稲刈りがようやく終了しました。「聞くところによると」というのは、11日にはお役御免となったからです。前回の投稿の後あたりから今度は雨が続き始めて作業が進まない状況が続き、ようやく終わったのですが、結果は酷暑の影響により等級がガタ落ちとなりました。そのことについては、昨日YouTube動画(https://youtu.be/xcz2_pYycQQ)として投稿しましたし、補足として先程アメブロ(https://ameblo.jp/aquaagri/entry-12825036889.html)も投稿しましたので、ご興味のある方はそちらを参照してください。

 

今シーズンの稲作商業から解放され、再び自由時間となってちょこちょことハウスの作業を再開させました。細部はまたYouTube動画で投稿したいと思いますが、簡単に言えば空芯菜は全て破棄し、ミントも全て切り戻して、今はほうれん草の播種・育苗・移植を着々と進めているところです。

 

9月の上旬まで真夏が続いたのに、下旬あたりではすっかり秋っぽくなり、10月になってからは冬の到来を感じるくらい朝晩が寒くなりました。たった10日前後の期間で気温が10℃位変わってきたので体調にくることもありましたが、何とか持ちこたえました。昨日あたりから白鳥の鳴き声が聞こえ、群れの飛行を見るようになりました。秋が短く、冬が早いと毎年思います。

 

この2ヶ月、YouTube動画の配信は全くできなかったのですが、それでも思ったほどの視聴回数の低下がみられず、登録者もじわじわと増えていき、昨日の投稿時で登録者は99人、夜が明けて確認したら100人となっていました! 前にも書きましたが、去年の12月8日に始めた時は1年後でも一桁だろうと本気で思っていたのですが、1年経たずに3桁になるとは驚きです。超ニッチなテーマを扱っていますが、需要は無くはないのだと自信をもって、引き続き投稿を続けていこうと思います。

2023年10月18日

稲刈りの中休みにて

稲刈りが始まって約2週間、ようやくまとまった雨が続き、稲刈りの中休みになったところで書いています。

 

「7月後半に梅雨明けするもぐずぐずとした天気が続くも8月は暑い日が続き、稲刈りが始まるころにはまた雨が続く」、というのが例年の天気ですが、今年は梅雨明け(7/22)から今までの一カ月ちょっと、ほぼほぼ雨が降らずに35℃越えの酷暑が続くという状況となり、新潟県全体が渇水状況となる年になりました。

地域によっては稲をはじめ各種の農産物が被害にあっているようですが、手伝いに行っているところは冬の小雪(=夏の水不足)を見越して、例年よりも1週間早く田植えをしたことが功を奏し、何とか最低限の水を確保することができたようです。

しかしながら、長期間の酷暑と渇水は稲の生育に影響を与えてしまい、これまで収穫した早稲の米の状態は残念ながら良くはありませんでした。これから収穫する中生・晩生の品種に期待しましょう。

 

ということでお盆が明けたらすぐに稲刈りという繁忙期に入ってしまい、ハウスの作業は魚のエサ槍と水の管理という必要最小限の作業は続けています。

今年の夏季品種として栽培した空芯菜ですが、自分が食べたところも美味しく、当初はネットを含め売ることができましたが、なかなか続きませんでした。「クセはないけど、使い方が特殊で続かない」という感想がありました。熱帯系野菜で炒め物がメインだからな… 

栽培した感想では、水耕栽培に向いている(水中の養分を十分に活用できる)、暑い時期でもきちんと育つ、同じ株から何度も収穫できるのが利点となる一方、弦がどんどん伸びてしまい他の株と絡まる、根が育ってパイプが詰まる(バジルほどではないが)、水の減りが激しい、といった欠点もありました。

連日の酷暑による蒸散量の増加や、パイプ詰まりによる水漏れがちょくちょく起こったこともあり、毎日のように相当量(貯水タンクの半分以上)の水を足したことから、わざと水質検査はしませんでしたが、おそらく窒素量は少なめで推移したと思われます。それでも窒素不足を示す兆候もなく、しっかりと育つ空芯菜はこの時期の栽培品種としては貴重なので、今年は全面(穴は一つ飛ばし)に植えましたが、来年は反面にとどめ、別の品種を試そうかと思います。

 

そういえば、Amebaの方でもブログを書き始めました。こちらでは農場の個別作業の状況を書き、そちらでは農業関係を中心とした時事問題を書こうと思います。どちらも今はなかなか筆が進みませんが、繁忙期が終わったら書けるようになると思います。

2023年09月08日

なぜアクアポニックス?③

前回は日本全体及び新潟県の地理的条件と新潟県の農水産業の現状及び今後の動向から、アクアポニックスの導入の必要性について考察してきました。その結果、新潟県の本土側の平野部では環境要因からのアクアポニックスの必要性は低いとの結論に至りました。それでは何をもってアクアポニックス事業の継続理由とするのかについて、結論を導き出したいと思います。

 

前回・前々回とコオロギ騒動を例に挙げ、安易に国連報告などを持ち出すべきではないと指摘してきました。なぜなら、いくら国連が地球規模での食料危機や水資源の枯渇を主張しても、現状の日本ではその可能性の片鱗も見えていないからです。食料自給率の問題はあっても、現在でも「飽食の時代」は続いており、少なくとも日々のニュースで「貧困による餓死」という話はまず聞きません。水の問題にしても、局所的な渇水問題はある一方、十年に一度の大雨洪水被害は毎年どこかで起こっており、押しなべて言えば国内で水の枯渇を予見できる状況はありません。つまり、国連の報告と国内の一般の感覚は乖離しており、それでも無理やり押し通そうとするとどうなるかは、前々回で詳しく指摘したとおりです。同様に、SDGsや環境問題からのアプローチについては「SDGsに対する私見」で詳しく述べたとおり、私自身はアクアポニックスの導入理由としては考えていません。

 

では何を目指してアクアポニックスを導入するのかと言えば、少子高齢化による労働力不足の解決策の一つを見出すことです。「社会的取組み」でも触れましたが、人口動態として当面は若年労働者の総数自体が減少していくことは避けられず、一方で長らく続いたデフレ経済からようやく脱却する道筋も見えたことから、全職種での人手不足が予想されています。その中でも従来から職業としての人気が低い一次産業は、更なる労働力不足が懸念されます。

農業界でもトラクターの自動運転やドローンなど、ICTの導入による労働負荷の低減が進みつつありますが、人自体を減らせる状況ではありません。仕事の内容や地域などの状況から、将来的も「完全自動化により人は要らない」ということにはならないと思います。とはいえ、少人数でも仕事を回せる、高齢者でも負担が少なくて長く働けるようにするには、この技術発展の方向性は間違っていないと思います。

そんな中で農業と水産業が融合しているアクアポニックスは、少ない労働負荷で食料供給量を増やせる事業として需要があると考えます。このアプローチでは地域特性や環境特性は関係ないので、北国の平野部であっても効果は変わりません。逆に地域的には人口減少が進む市町村内ですから、今後の需要は増加するでしょう。

 

一方で国の政策としては、有機農業の拡大と普及を目指して推進しています。

(参考資料 https://www.maff.go.jp/j/seisan/kankyo/yuuki/attach/pdf/meguji-full.pdf  ) 

オーガニック野菜の需要に比べて国内産の供給が少ない現状を改善するための政策ですが、一般的に有機農業は慣行農業に比べてコストが増えることから、上記の労働負荷の低減の流れに逆行することになります。増加するコストの中身としては除草や防虫の作業量及び資材や有機肥料の単価及び使用量などが挙げられますが、アクアポニックスでは「有機肥料=魚のエサ」であり、従来の有機肥料よりも安価に用意できます。ましてや昨今の肥料価格の急騰を鑑みると、資材コストの低減という効果も期待できます。

 

以上をまとめると、従来より少ない労働力と資材コストでオーガニック野菜と魚の二つの収入源を得られるアクアポニックスは、労働力不足対策、資材価格高騰対策、有機農法推進という国の政策と、稲作偏重からの園芸振興という県の政策に沿うものになると考えます。ただし、そのためにはアクアポニックスが「エコ活動」の延長ではなく、「農法・養殖法」として定着していなければなりません。現在はそこが未だ定まってはいない状態なので、まずは新しい農法として認知されるようにしたい。私はその先駆けとして、小さくとも地道に、一歩一歩進んでいきたいと思います。

2023年03月31日

なぜアクアポニックス?②

今回は前回のブログで指摘したコオロギ騒動の原因を踏まえて、本題である「なぜ今、日本でアクアポニックスが必要なのか?」というテーマについて考えていきます。

 

まずは地理的特性から考えてみます。アクアポニックスは耕地面積が限られる地域や水源が少ない地域に適した農法であることは、「アクアポニックスについて④」で述べました。それを踏まえて我が国においてどうかということですが、他国との比較で考えてみた場合、水資源は豊富なものの、山岳の多い島国ということから耕地面積は少ない方と捉えられています。よって、大まかに見れば耕地面積が限られている都市部や離島地域で有効な農法と言えます。

ここから少し細分化して、都道府県単位での必要性を考えてみます。とはいえ、全ての地域の状況は分からないので当地の新潟県で考えみると、佐渡と粟島という離島地域を除いた本土側は他の県とほぼ同様に海と山に囲まれ、複数の河川の周辺にできた平地に都市部が形成されています。ただし、都市部からそう遠くない地域に農地が広がっているので、都市農園の需要は限られているでしょう。一方で、山間部の農地は単位当たりが小さくなってしまうため、特に作業の効率化が求められる稲作にはマイナス要素があります。そこをアクアポニックスなどの施設園芸に切り替えることで増益を図るという考えはあります。ただし、山間部で育った米は食味が良いブランド米になっていることや、山間部は積雪量が多いので冬季間の施設維持にコストがかかることを考慮する必要があります。これらを考えると、農業用水の確保に障害がある佐渡や粟島では水資源の効率的利用の観点からアクアポニックスの導入に理由を見出せますが、本土側においては地理的な必要性は低いと考えられます。

 

次に都道府県単位の産業面から考えてみます。新潟県の農業生産額と作付面積のデータ(令和2年 https://www.pref.niigata.lg.jp/sec/tokei/1356865340711.html)を見ると、生産額の60%、作付面積の80%が米です。「新潟=米」の全国的イメージがデータでも裏付けられた形ですが、それと同時に単純にはいかないものの、作付面積と生産額の20%の差は米の単価が低いことの表れでもあります。それに加えて、国内全体のコメの消費量の低下や他県産のブランド米の増加などにより、今後とも生産額の低下傾向は続くと考えられています。このことから、県としても2018年の減反政策廃止の前から「稲作から園芸への移行」を政策として進めています(新潟県園芸振興基本戦略 https://www.pref.niigata.lg.jp/site/nouen/engeisinkoukihonsenryaku.html)。県が振興しているブランド農産品はいくつもありますが(ルレクチェ、越後姫、黒崎茶豆、八色スイカ等々)、残念ながらその知名度は県内に留まっており、現状では稲作からの転換はなかなか進んではいません。とはいえ、その方向性は当面続くと考えられるので、今後は仮に園芸振興基本戦略の中にオーガニック野菜の栽培振興などが追加された場合などは、行政との連携が見出せるかもしれません。

新潟県の水産業(https://www.pref.niigata.lg.jp/sec/nogyosomu/suisantiiki191224.html)についても、園芸農産物と同様に地域の特産品(寒ブリ、南蛮エビ、ズワイガニ等々)はあるものの、こちらも知名度は県内に留まっています。そしてその豊富な漁獲量により地域内での消費は満たされており、あえて陸上養殖で食用淡水魚を生産する必要性は低いと考えられます。魚については「県の魚」として振興対象となっている錦鯉などの観賞魚に需要がありそうですが、現在は農地での養殖業は認められていないので、魚の販売のハードルは高いと言えます。


以上の条件を踏まえると、県の園芸振興という大枠の流れに乗りつつも、地理的必要性が薄い本土側の平地でアクアポニックスを始めた私は、別の理由を見つけなければなりません。ただし、ここで国連報告やSDGs等の海外要因を安易に持ち出すと、コオロギの二の舞となる危険性があると前回指摘したところです。

次回はこの結論について書きたいと思います。

2023年03月30日

なぜアクアポニックス?①

前回は藤沢アクポニビレッジ等の見学の様子をお伝えしましたが、あの時の急な質問の中で「なぜアクアポニックスに携わろうと思ったのか?」といったものがありました。その時はちょうど農業で独立したいという思いがあったところに、アクアポニックスという面白い農法に出会ったことが重なってという回答をしました。当時の状況の詳細は当ブログの「アクアポニックスについて④」に詳しく書きましたが、今回は改めて「なぜアクアポニックスを今、ここで行うのか?」ということを深く考えてみたいと思います。

 

このことを考えるきっかけは農場見学の他にもう一つ、見学に行く少し前にネットで大炎上した「コオロギ食」のことがありました。その状況を簡単に説明すると、ここ数年で着々と進んできた昆虫食を導入する試みの一つとして、コオロギ食品を試験的に給食で提供されたという記事が炎上し、それを機に昆虫食に対する拒否感が膨れ上がってしまったという事件です。(参考記事 https://bunshun.jp/articles/-/61542 )

この件については最初は他人事で捉えていましたが、よくよく考えてみるとそうもいかない、下手すると二の舞になりかねないという危機感が芽生えてきました。

 

確かに近年、国連食糧農業機関(FAO) などが地球規模の食糧危機の警鐘を鳴らしており(2022年報告 https://www.fao.org/japan/portal-sites/foodsecurity/jp/)、その対策の一つとして昆虫食があげられています(世界の食料不安の現状 2013年報告)。上記のコオロギ食は国内での動きの一環として、昨今のSDGsへの取組みも合わせた試みだと思います。現にこの炎上騒ぎまでは、コオロギ養殖事業も大手企業と連携した製品化も徐々にではあるが着実に進んでいました。彼らは純粋に食糧危機を憂い、SDGsの一環として事業拡大を図っていたのだろうと思いますが、残念ながら消費者はついて行っていなかった… 

以下は私なりの分析です。

 

①そもそも人々の食べ物の選択ハードルは高い

 野菜作りを生業として始めたばかりの私が改めて気づかされたのは、「消費者は食べ慣れていないものをわざわざ選ばない」ということです。自分の農場施設を作ってから、まずは「商売するなら人目を引きそうな珍しい野菜を作ろう」と考えて、色々な野菜を栽培してみました。しかし、意見を聞こうと周りの人に無料で渡そうとしても貰ってもらえないこともありました。魚のティラピアでも同じく、いくら世界では食べられていると言ったところで、国内での商品価値は低いです。やはり、消費者としては何らかの必要性がない限り、知らないもの食材として選ばないものです。野菜や魚ですらこれなのだから、まして虫のハードルは高いでしょう。

 

②「ではの守」への反発

 どんな分野においても何かにつけて聞かれる「海外では~」「欧米では~」「国連では~」という、いわゆる「ではの守」の意見が戦後長らく(明治維新後ともいえる)もてはやされてきましたが、いよいよその威光も消えつつあるのか、最近では「うちはうち、よそはよそ。日本には個別の問題もあれば、アプローチの仕方もある」という意見も聞かれるようになりました。そこには冷静な指摘が多いですが、これまで「ではの守」を掲げて上から目線で説教じみた主張を繰り返してきた「意識高い系」に対する反発もある様に感じます。そのような言論空間の中ではいくら国連が推奨していると言えども、昆虫食をすんなりと受け入れられることはなく、フードロスや酪農などの食糧生産の問題など、国内の食糧問題の解決が先なのでは?という意見が出るのは無理もないでしょう。

 

③「ごり押し」への不信感

 先程から指摘してきましたが、国内での昆虫食の需要は決して高くはありません。その一方で、いつの間にか着々とコオロギ食品が実用化され、店頭で見られるようになってきました。メディアは少し前までは虫を食べることを罰ゲームとして扱っていたのに、いつの間かSDGsだなんだと理由をつけて好意的に扱うようになりました。この状況を見ると私などはいわゆるメディアによる「ごり押し」を感じてしまいます。メディアによる「ごり押し」はこれまでいくつも炎上してきたせいか最近は下火のように感じますが、その不信感は拭えていません。

 

④そして陰謀論へ

 上記①~③が絶妙に交じり合って生まれたのが「コオロギ陰謀論」ともいうべき批判です。

曰く、「コオロギ? エコだのSDGsだの言って補助金でもついているんじゃないの?」

曰く、「メディアがごり押しして、今度はコオロギを食べさせようとしているのか?ステマ?」

曰く、「官庁と業者とメディアでコオロギの利権ができているんじゃないの?」 etc…

それぞれへの疑問点については正否があるでしょうが、一度芽生えた不信感はなかなか拭えないものです。今後のコオロギ事業がどうなるのか分かりませんが、少なくとも今回の件がマイナス要因となることは間違いないでしょう。

 

以上のことを踏まえ、今回の事件の原因を考えると、コオロギ食事業の軸足が国連の食糧危機報告に偏りすぎていて、日本国内の状況に沿っていなかったのではないか、言い換えれば「なぜ今、日本でコオロギ食を普及しなければならないのか?」という問いに明確に答えられないからではないかと思われます。仮に日本でコオロギ食を普及させることに明確な理由を出せたなら、「コオロギなんか食べたくない!」と考えている人からも「そういうことなら食べてみるか」となる人も出る可能性もあり、ここまでの炎上騒ぎにはならなかったかもしれません。

翻ってアクアポニックスの現状を考えた時に、「なぜ今、日本でアクアポニックスを普及しなければならないのか?」という問いに明確に答えられるか?という指摘を受けなければならないでしょう。そういう意味でコオロギの一件が他人事ではないのです。ともすればエコ・SDGsの文脈で語られがちなアクアポニックスですから、それ以外の意義を語れない場合はコオロギの二の舞になりかねないという危機感があります。

次回はこのことについて考えてみたいと思います。

 

2023年03月28日

初めての藤沢

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昨日動画も配信しましたが、去る3月18日に藤沢にある湘南アクポニ農場及び藤沢アクポニビレッジの見学に行ってきました。こちらは㈱アクポニ様が運営している農場で、アクアポニックスの様々なシステムが展示されており、国内施設では現状最先端ではないかと思います。こちらがオープンして間もなくコロナ化が始まったこともあり、以前から見に行きたいと思いつつもなかなかチャンスが巡ってきませんでしたが、ここにきてようやく実現することができました。
今回の見学は定期的に実施されている見学ツアーに普通に申し込みました。見学自体も楽しみでしたが、ビデオを撮っておいて動画に使おうとは思っていました。ただ、この見学ツアー自体も事業として行っている(有料)ので、説明自体は映像飼料としての個人的に残しつつ、差し障りのない所だけ編集して動画に使用と考えていました。
さて当日はあいにくの雨。この時期の関東は大体暖かい陽気に恵まれるものなのに相変わらずの不運。最寄り駅につき、バス時間を確認すると一時間に一本、駅から離れれば結構のどかな風景が広がります。農場は地域の大農家であろう、立ち並ぶハウスの中の一角が湘南アクポニ農場になっていました。雨の中時間まで待っていましたが、中では結構大人数が見学していまた。見学ツアーは1日1回だったはずでは?と考えていると、濱田さんが到着。当日は代表の濱田さんが来られるかわかりませんでしたが、うちのシステム施工以来なので約3年ぶりの再会。そこから見学ツアーが始まりました。
湘南アクポニ農場ではアクアポニックスのシステム(魚タンク+フィルター+野菜ベット)を数種類展示されており、それぞれで様々な植物や魚を育てられていました。「農場」というよりは「展示場」と行った方が近いかもしれません。システムの詳細は文字で書いても分かりにくいので、配信した動画や㈱アクポニ様のHPなどを参照して頂きたいと思います。
さて、農場の中では先客としてアクアポニックス・アカデミーの生徒さんたちが講習を受けていました。20人ほどいたと思います。アカデミーは最近内容がリニューアルされたそうで、今は数か月のコースで実習などもあるそうですが、私が受けた時は基本コース1日、ビジネスコース2日の座学でした。私はビジネスコースを受講しましたが、初日は基本コースと共通で参加者は私含めて4名、二日目は私一人だったので濱田さんとマンツーマンで一日お話しさせていただきました。それからすでに4年経ち、回を重ねるごとに受講者は増えているそうです。年齢層は様々でしたが、私と同年代かそれより上の方が多い感じがしました。徐々にでもアクアポニックスの知名度も上がり、興味が持たれてきている証左かなと思います。
こちらはあくまで一般の見学者なので講習の様子を傍らで見ていたのですが、不意に説明をしていたアクポニ社員の孫田さんから生徒さんたちの前で質問するので答えてと頼まれました。急なことではありましたが簡単な質問ならと了承しました。一通りの説明が終わって皆さんが集まったところで濱田さんがあいさつされ、その後にインタビューを受けるような形で始まりました。何せ準備はしていないので簡単なことにしてくれと思いましたが、生徒さんたちの質問はなかなか核心を突くものだったので答えるのも大変でした。
その後は車で移動し、藤沢アクポニビレッジの見学に行きました。こちらも詳細は動画を見ていただきたいと思いますが、最後の建物に入ったところでカメラの操作ミスにより動画が撮れていませんでした。中の様子は一瞬うつっただけになりましたが、構造としては最初に見た大きな建物と基本的には同じだと思います。小型のティラピアが元気に泳いでいるのも見えました。周りは住宅だらけなので、自力で来るのは無理そうです…
見学が終わり、駅まで送っていただきました。車中でも今後のことなどを色々はお話しさせてもらいました。この日はこの後、先約があったのでかないませんでしたが、次回は他のスタッフさんとも食事を交えてお話しできたらと思います。YouTube動画も今回のようなグダグダな感じではなく、しっかりとしたコラボ動画を作りたいですね。今後は気軽に行けると思うので、何かの機会にまた行きたいと思います。

2023年03月25日

春到来

前回の投稿からあっという間に2ヶ月近く経ってしまいました。その間、1月末の大寒波到来はありましたが、総じて平年より少なめの雪で済んでくれたようです。

3月になってからは急に春が来たように暖かい日が続いています。天気予報を見る限り当面は雪の心配はなさそうですが、4月になってから降ることもある土地柄ですから油断はできません。ご近所さんに会ったら挨拶と共に「いつ(スタッドレスから)タイヤ変える?」と聞くのが雪国あるあるです。

 

動画で紹介しましたが、去年の秋から準備した冬の低温対策は、この冬シーズンを通して期待通りの結果を出してくれました。魚タンクのフタ、二重ハウス、ハウス用ストーブ、この3つの複合効果により、氷点下の深夜・早朝も水温10~15℃で乗り切り、ほうれん草を栽培することができました。育苗も二重ハウス内で行うことで、ゆっくりでもしっかりと発芽してくれました。現在は4月出荷を目指して育てています。

 

その動画ですが、去年の12月から初めて3か月、現時点で10本配信し、チャンネル登録者30人です。少ないと思われるかもしれませんが、私自身はよくできた方と思っています。何せ、すでに動画作成にプロが参入してすっかり出来上がった感のあるYouTube業界に、アクアポニックスというまだまだ認知されていない極めてニッチな世界がテーマで、知名度も無く、1ミリも華がない個人が素人作業で作る動画チャンネルですから、「登録者数は1年後でも1桁とか十分あり得る」と本気で思っていましたから。

「動画作りました」という宣伝も、㈱アクポニさんが主催するコミュニティグループ以外ではしていないので、まさか知り合いに「みんなで見ているよ」と言われた時はとても驚きました。正直言うとそれ以来すっかり気恥ずかしくなってしまって、当初入れていたナレーションが今は出来なくなっています…

そんなこんなありますが、配信ペースは現状の1~2週間に1本でしばらく続けようと思います。

 

先月末に上記のコミュニティつながりで、わざわざ長野から見学に来られました。この春にアクアポニックスの施設を作るそうで、アクアポニックスをやっているのは近隣ではうちが一番近かったとのこと。特に当地よりもはるかに寒い冬をどう超すかという点で、多少のヒントになったら良かったと思います。

そろそろ私自身も新しい知識を得るために、活動しようと考えています。




写真説明:すっかり雪が解け、暖かい昼間はハウスの横を開けて風通しを得るようにしています。

2023年03月08日

開業1周年を迎えて

昨年の1月11日に開業してから昨日で1年が経ちました。本当にあっという間の1年でした。年々と一年が早く感じるものですが、去年は特にそうでした。

 

そもそも開業は別の日を予定していたのですが、「一生に一度のことだから」ということで普段気にしない暦の六曜などを確認したところ、予定日は「不成就日」だった一方、1月11日が年に数日しかない「一粒万倍日」と「天赦日」が重なる幸運日であることを知り、「こういうのは縁起も必要かな」ということでこの日にしました。開業届等を税務署や県に出したり、事業用の口座を作ったりで1月が終わり、2月は食べチョクへの出品に向けて申請やら出品準備をして、とりあえず商店としての体裁を整えました。3月から10月までは稲作の合間に色々な品種を作っては需要の様子を見たりしていました。初めて自分が育てたものが売れた時は嬉しかったですね。稲作の方は10月で終わってまとまった時間ができてから春夏の片づけと冬への準備を終え、そして初めての確定申告への事務作業で頭を抱えたまま年が明けたという感じです。

 

確定申告については終わるまで気が抜けませんが、12月から始めた動画配信はその気分転換にもなっています。素人仕事なので編集に時間がかかるので配信日を決めた定期配信は当面できそうにありませんが、意外と楽しんでやっています。当然、ユーチューバーとして稼ぐことは考えていませんが、作業の記録として残すのは意味があるかなと思って配信しています。その上で「アクアポニックス個人農家」という国内では希少な試みに共感してくれる人がいてくれたら嬉しいことだし、今は少なくてもアクアポニックスという農法であったり、単語だったりがいずれ話題になる時が来ると確信しているので、その時に「検索したらこんな動画が出てきた」という1つになれたらと期待もしています。

 

昨年末、いつもお世話になっている㈱アクポニさんの社員さんが偶然にも地元が近いということで、農場の見学とほうれん草の販売対応をさせてもらいました。短時間ではありましたけど、対面販売も悪くないとは思いました。とはいえ、普段からそれをやるのは色々きついので、引き続き農場での直接販売は基本的にはしませんが。ただ、前回も書いた今年の目標「売り上げの安定と利益の向上」を達成するためにも、やはり別の売り方も考えないといけないとは思います。

 

あと個人的なことですが、7月に初めて交通事故にあいました。信号待ち中に追突された100%被害者で、幸い被害は軽い方でしたが、買ってから一年も経たずに車に傷をつけられたこと、むち打ちで長引く通院、相手保険屋とのやり取りなど、初めてのことばかりでかなり困惑しました。今は示談交渉中でまだすべて終わったわけではないですが、保険の内容はよくよく考えて契約した方が良い(特に弁護士特約)こと、事故直後の相手への対応は気を付けた方が良いということは教訓でしたね。事故直後の相手の態度と処置を思い出すと今でも腹が立ちますから…

 

徒然と書きましtが、今年も振り返った時に色々やったなと思える一年にしたいと思います。今後ともよろしくお願いいたします

2023年01月12日

令和5年(2023年)謹賀新年

遅ればせながら、明けましておめでとうございます。


まもなく開業から1年が経とうとしています。この1年間の歩みについては、その時に改めて書こうと思いますが、今年の目標としては「売り上げの安定と利益の向上」としたいと思います。なにせ、初めての確定申告に向けて書類準備をしている中で、数字を見ると暗澹たる気持ちにならざるを得ません…
そんな作業の合間に気分転換のように動画は殷賑を始めまして、先程5回目の動画を公開しました。


今回は冬期間の水の保温対策の一つとして、魚タンクにフタを付ける様子紹介しました。
そもそもハウスを建設してから今回で3回目の冬を迎えたわけですが、過去2回の様子は次の通り。
1年目、システム設置時に用意してもらった1kwヒーター2本でどうなるか、検証のつもりでそのままの状態で冬に突入。なお、ティラピアは水温12℃以下になると死んでしまうというので、ヒーターは全て魚タンクに

投入。サーモを18℃で設定して様子を見るが、水温は平均で12~13℃、時には10℃以下になることも。幸いティラピアは死なず、当時植えていた水菜やからし菜はゆっくりながら育ったものの、電気料金が著しく跳ね上がって青ざめる。
2年目、1kwヒーターをもう一つ増やして火力を増すとともに、シルバーのビニールシートを用意し、内側にプチプチを張り付けた上でタンクの周りに巻きつけて保温を試みる。設定温度を18℃のまま、気温の下がる夜間は魚タンクのみに送水し、一方で気温が上がる昼間は野菜ベットにのみ送水にする、更に吐出量も極限にまで減らすことで水温低下を極力減らすように試みたところ、平均水温は13~14℃。電気料金は抑えられたが、野菜(去年と同じ)が全くと言っていいほど育たなかった。


過去2シーズンは、こんな感じで正直いって失敗に終わりました。
そこで今シーズンの目標は「電気料金を抑えつつ、冬季間の野菜栽培を継続する」となりました。
そうなると更なる電力消費を招くヒーターの追加は却下となり、水温低下の原因を極力抑制することが手段となります。となると、水が露出している部分を塞ぐことが有効だろうということで、まずは「魚タンクにフタをしよう」と考えた結果が、今回の動画になりました。
作業の詳細は動画を見ていただければわかると思いますが、フタをする第2の理由として「ティラピアの飛び出しを防ぐ」というのもあります。特に動きの激しい夏場が主ですが、ティラピア自身が2年以上の飼育でだいぶ大きくなったこともあり、ジャンプ力が強くてタンクの外で干からびているのを時々見ることになりました。稚魚の投入以降、こちらが確認できる死因の全てかこの「飛び出し」でした。これまではネットで防いできましたが、フタにした方が頑丈でいいでしょう。


そんなことで、昨年の10月末にこの作業は完了しました。更に次の対策として、もっとも水温低下を招くであろう野菜ベットへの対策について、後日紹介したいと思います。

2023年01月05日

動画配信開始、そして冬到来

今シーズン初の本格的な雪(積もりそうな雪)を見ながら書いています。

比較的時間の余裕のある冬期間を利用し、YouTubeでの動画配信を始めました! 12月8日に第1回を配信しましたが、若干の修正を加えて13日に第2回と共に再配信しました。現在、第3回を鋭意製作中です。

動画編集は数年前にちょっとだけ挑戦しましたが、今回久しぶりに再開しました。とはいえ、全くの素人仕事のうえ、初めて自分の声でナレーションも入れたりと、なかなか苦戦しています。自分の声って本当に聞き馴れない……

夏から撮りためた映像があるので、それを使いながら準備出来次第アップしていきますので、暖かく見守っていただけたら嬉しいです。

秋に播種したほうれん草がそろそろ収穫できるくらいにまで育ってきました。販売開始のお知らせとして、播種~収穫までをまとめた動画(第3回)を配信する予定なので、よろしくお願いします。

2022年12月18日

秋作業の終わりと冬支度

前回の投稿から2ヶ月ほど空いてしまいました(スミマセン)。

こちらの仕事とは別に、出稼ぎとして稲作作業に出向いているのですが、稲刈りと付随する作業は10月中旬に終わり、後始末等を終えて10月の終わりからようやくこちらの作業に完全復帰しました。

ただ、その間全く作業できなかったわけではなく、雨続きで稲刈りが止まった時などを利用して、夏季作付けのバジルの廃棄(全く売れなかった…)や、冬季作付けのほうれん草の播種などを行いました。

復帰後にほうれん草の苗の移植を済ませ、それからは冬支度として「魚タンクにフタをする」と「野菜ベットエリアの二重ハウス化」に向けた作業を開始、今日時点では魚タンクのフタは完成、二重ハウスは骨組みはできていて、そこに張るビニールの入荷待ちの状態です。

また、魚タンクのフタのために作った枠の影響で、メディアベットの排水パイプの高さを上げる必要ができたため、9月に計10個に拡張完了したトロ舟を一旦解体して足場ブロックの追加、配管のやり直しという大工事が発生したものの、そちらもつい二日ほど前に終えることができました(不調だった排水状態も改善したので良しとしています)。

現在はほうれん草の成長を見守りつつ(写真)、冬季間の水温をどうやって上げるかを思案しています。

実験栽培を始めた一年目の冬は、最初に用意した1kwヒーター二本で過ごしましたが、真冬の最低気温0℃前後の雪国では終始設定した18℃に届くことはなく、幸いティラピアは死なずに済んだものの、春先に来た電気代の請求書を見てびっくり。

二年目の去年は同型のヒーターを一本追加した上で、水流を夜間はヒーターを投入した魚タンクと貯水タンクの間のみとし、昼間は逆に野菜ベットと貯水タンクの間のみとして水温の低下を抑えるように試みましたが、明確な効果は感じられず、電気代は抑えられたものの、野菜が全く育たないという結果となりました。植物はやはり夜間にぐっと育つのですよね…

ということで三年目の今年は、ヒーターの追加など電気をこれ以上使う方向ではないやり方で保温が出来ないものかと考えた末に、フタと二重ハウスを思いついたわけです。ただ、それだけではやはり不十分だと思うので、加温の方も検討します。

最後にメディアベットで栽培中の各種ミントは、収穫時期もそろそろ終わり、また改修工事のため、切戻しをしたので、今期の販売は終了しました。購入してくださった皆様、誠にありがとうございました。来年は種類も大幅に増やし、セットメニューなども充実して販売しようと考えておりますので、よろしくお願いいたします。

 

 

2022年11月09日

SDGsに対する私見

アクアポニックスについては主に(株)アクポニさんの広報努力によって各種メディアに取り上げられることにより、徐々にではありますが認知が広がっているように感じます。しかし、その紹介の仕方というか、切り口というか、扱われ方が「SDGsの実践のため」や「環境問題を解決するため」など、産業やビジネスではない視点を強調し過ぎていることが気になっています。

 

去年あたりから急に流行しだしたこのSDGsは、個別の目標を見る限り「まぁ、そうだよね」という内容であり、ああいうチェックリスト的で明確な目標設定は、特に受験勉強が得意な日本のエリートには受けが良いように感じます。何はともあれ現時点で「SDGsを実践していこう!(内容はよくわかんないけど)」というふんわりとした流行がある中で、そのネタを探しているメディア側とアクアポニックスの認知度を上げたいこちら側の目論見が合致した結果のことなので、ある程度は仕方のないことかもしれません。

 

SDGsは基本的には発展途上国の社会問題を扱っているものが多いことから、我が国の国内問題としてはすでに解決しているものが多いです(もちろんミクロの問題はありますが)。環境問題については、農業界ではSDGs以前から様々な方法で取り組まれています(GAPなど)。あとは「優先度と価値観」の問題と私自身は捉えています。

あらゆる国・地域・民族ごとに歴史・文化・伝統・風習などがあり、それらが現時点での国民の「常識(世論)」を作り出しています。その常識(世論)が様々な社会問題を解決する優先度を生み、価値観が解決策の違いを生みます。SDGsの諸目標は上記の通り随分と「万国共通的」ではあるけれども、やはり西欧先進国の価値観が多分に含まれていることを違和感として感じてしまいます。

 

若干SDGsに対しては批判的な物言いになってしまいましたが、私としては「基本的に悪いことは言っていないのだから、国・社会・民間、それぞれの立場で出来る範囲のことをして問題解決に繋がればよい。しかしながらSDGsに縛られすぎることによって不当な不利益を被ったり、国民の常識とはそぐわないことを押し付けられるべきではない」という考えです。

 

当HPの「社会的取組み」で当方とSDGsとの関わりについて基本的な考えを書きました。

確かにアクアポニックスという農法は他よりもSDGsとの相性は良いと思います。ただし、以前のブログにも書きましたが、あくまで私は純粋に農法としてのアクアポニックスに魅力を感じ、産業・ビジネスとしての希望を見出して起業したのであり、SDGsや環境問題からのアプローチでアクアポニックスを始めたわけではありません。つまりは、「アクアポニックスが産業として普及することにより、結果として環境問題も改善される」というのが、SDGsへのスタンスを踏まえた上での私個人の意見です。

 

ところが、世間的にはメディアの露出の仕方から、アクアポニックスがSDGsの実践や環境問題の解決策として結びつけられがちです。比較論としては間違っていないのですが、そこが行き過ぎるとこれからアクアポニックスを始めようとする人や私のようにビジネスとして成長させようとする人にとっては、チャンスになる可能性もありますが、悪影響を及ぼす可能性もあります。

この危惧が僅かながらですが表面化した実体験については、いずれ書きたいと思います。

2022年09月04日

開業から半年の雑感

世間ではショッキングな出来事が多く、暗い気持ちになる世相になっている中、アクアアグリ開業から半年となります。まだまだ「売り上げ」と言えるほどの結果は得られていないですが、「売れない」ということもまた経験、まだまだ始まったばかりです。

前回の更新からだいぶ時間がたってしまいましたが、この事業と別に稲作の作業もしておりまして、田植えがある5月を中心にその前後となる3~6月が春の繁忙期となるので、なかなかこういった作業ができなくなるというのが理由です。今度は稲刈りがある9月を中心に秋の繁忙期があります。

当地ではカラ梅雨で6月末から猛暑が始まり、ハウス内で作業ができる時間がなかなか限られている状況です(40℃はゆうに超えます)。そのようなハウス内の環境ではチンゲン菜や小松菜はなかなか育たないので、野菜ベットではバジルの栽培に移行しました。

また、自作のメディアベットではミントを栽培し始め、現時点ではスペアミント、イエルバブエナ、キャンディミントの3種類を育てています。なかなか作業が進んでいませんがあと4種類ほど増やせるスペースがあるので、何とか早めに拡張したいと思います。

一方、メディアベットではミントの他にヒソップも育てているので、こちらも需要があれば販売したいと思います。

そのような感じで、季節的にも労働環境的にもなかなか作業時間が限られている状況ですが、厳しい中でも楽しんでいきたいですね。

 

2022年07月10日

栽培施設紹介

令和4年2月時点での栽培施設の状態を紹介したいと思います。

前回少し触れましたが、令和元年(2019年)の雪が解けたころ、自宅庭として植木やら何やらあったところを整地、4月に約90㎡のハウスを建設(写真①)、引き続き濱田さん(㈱アクポニ)の協力を得てアクアポニックス施設を整備しました。

この設備の基点は貯水タンク(写真②)です。ここに一定量の水を溜めておき、そこからポンプがフィルター(写真③)を経由して魚タンクと野菜ベットに水を送ります(フィルターから出た水を仮に「フィルター水」と呼ぶとします)。現在ここにはPH調整のためのサンゴ砂、不足気味になる微量元素を補給するための水耕用有機肥料、ボウフラ対策の金魚数匹と錦鯉1匹がいます。

魚タンク(写真④は設置直後の綺麗な頃)は直径2m高さ80cmの水量2000ℓサイズで、約120匹のティラピア(写真⑤)を飼育しています。ティラピアは約2年の飼育で大きいもので30cmくらいに育っています。魚タンクには常時フィルター水が送られ、オーバーフローした水(魚タンクの水を仮に「飼育水」と呼ぶとします)は貯水タンクに戻ります。

一方、魚タンクの前で分岐したフィルター水の一部は野菜ベットに送られます。野菜ベットにはいくつかの形式がありますが、ここでは簡単に言うと等間隔に穴をあけた塩ビ管に水を通すNFTという形式を採用しています(写真⑥)。約8mの塩ビ管計20本、1000株弱の生産量で、主に草丈の低い葉物野菜を栽培しています。この上流から流したフィルター水は野菜により硝酸塩が吸収されます(仮に「浄化水」と呼ぶとします)。下流で収束した浄化水は貯水タンクに戻り、そこで飼育水と浄化水が混ざった水が再びポンプからフィルターに送られます。以前のアクアポニックスの説明では飼育による水の富栄養化、硝化、野菜による浄化を分かりやすく示しましたが、実際のシステムではあちこちで色んな状態の水が交じり合い、全体として硝酸塩の過剰な上昇を抑えていると考えた方が良いでしょう。

以上の設備が㈱アクポニ様の協力で設置したメイン栽培施設です。ここで約2年間の栽培実験を行いましたが、その中で大きく2点の問題が発生しました。1点目はNFTでは栽培する品種が限られるということです。塩ビ管の穴に合う大きさのカップにスポンジ培地で栽培するので背の高い野菜や果菜類はトップヘビーになって安定しないし、根が繁殖するものは塩ビ管が詰まる、栽培地に深さがないので根菜類も向かないので、結局は草丈のあまり大きくならない葉物野菜に限られてしまうわけです。

2点目はポンプやフィルターにトラブルがあった場合、水の循環が止まってしまい、特に魚タンクの水質悪化を招くということです。昨年初夏、フィルターからの水漏れが発生し、それを止めるためにポンプを止めざるを得ませんでした。野菜の方はフィルター水が来なくてもすぐには影響は出ませんが、魚タンクへの循環を長期間止めるのは危険と思い、解決するまでポンプをつけたり止めたりしながらだましだまし魚タンクへ水を送ることでなんとか魚を死なせずに済みました。この一件から水流のメインフィルターを補完するサブフィルターになる部分が必要になると痛感しました。

それで昨年末から自作を始めたのが写真⑦⑧のハイドロボール(メディア)を培地にした野菜ベット(「メディアベット」と呼んでいます)です。ハイドロボールを培地にすることにより、NFTでの栽培に不向きな品種も栽培できます。ちなみに写真⑦の右側、二つ並んだ上のトロ舟(小)の右奥がヒソップ、トロ舟(小)二つで葉が茂っているのが二十日大根、左側のトロ舟(大)に移植したばかりのスペアミントになります。
また、ハイドロボールはフィルターの役目も果たすので、メディアベット部分には魚タンクから直接に飼育水を送水し、各トロ舟に自作したオートサイフォンにより一定の水位となったら排水され、魚タンクに戻るルートを作成しています。写真⑧のようにまだ余分スペースがあるので、今後もう少し拡張する予定です。なお、ハイドロボールはある程度まとまった重量を購入することもできますがそれなりの金額になるので、今は最寄りの100円ショップでコツコツ買い集めています(笑)

他にもハウス内の設備を充実するために毎日のようにホームセンターに通い詰め、色々なものを自作してきました。これを機にDIYに目覚めそうです(笑)

 

 

2022年02月21日

アクアポニックスについて④

アクアポニックスの詳細説明の最後はその歴史と私が出会った経緯について書きたいと思います。

 

そもそも「アクアポニックス」とはアクアカルチャー(水産養殖)とハイドロポニックス(水耕栽培)を組み合わせた造語で、その始まりは浮島の上で植物を育てたというメキシコ原住民の農法「チナンパ」といわれています。
現代農法としては1980年代に主に離島など水資源が不足している地域で研究され、アメリカではバージン諸島から始まって現在では全土でオーガニック野菜の栽培法として定着しているそうです

 

さて、私はアクアポニックスのことを(株)アクポニ 代表の濱田さんから教わりました。
濱田さんのプロフィールを簡単に説明すると、もともと超有名企業に勤めていた濱田さんは仕事先のアメリカでアクアポニックスに出会い、その魅力に取りつかれて脱サラ、アメリカの農場で研修を受け、帰国して起業し、アクアポニックスを広める活動をしながら、神奈川県藤沢市にある農場を運営されています。

 

2019年12月、私は濱田さんが開く講習会に参加しました。
当時の私は地元の農業法人に転職して約5年、もともと独立農家を目指していたものの、実際に就農してみると当初考えていたことは現実的ではないと知り、次の目標も将来の方向性も見出せずにいました。
そんな時に何気なくネットサーフィンしていてヒットしたのが濱田さんの講習会でした。そのアクアポニックスの記事を読んだときは「本当にできるなら楽しそうだな」と正直言ってちょっと懐疑的でした。
しかし、実際に濱田さんに会い、朴訥としながらも楽しそうに話すところを見ているとすっかりアクアポニックスの魅力がうつったのか、元々感情の薄い自分が数年ぶりに「ワクワク」しました。そして二日間の講習会が終わるころには「残りの人生をアクアポニックスに賭けても後悔しない」と腹を括っていました。
翌年4月に自宅隣にハウスを建設、そこに濱田さんの支援を得て栽培施設を設置して試験栽培を始めました。そして約2年の試験を経て実際に「魚に餌をあげると野菜が育つ」ことに確証を得て、先月起業したところです。

 

そのようなわけで農業の規模としてはまだとても小さいのですが、国内でのアクアポニックス農家の事例がほとんどない現状では、まずは事業として実績を積むことが必要な時期であると考えています。
そこで次回からは当農場の施設について紹介していきたいと思います。

 

追伸: 濱田さんの活動について詳細は、下記の(株)アクポニ 様のHPをご確認ください。

 https://aquaponics.co.jp/

2022年02月02日

アクアポニックスについて③

さて、3回目にしていよいよアクアポニックスの本題に入ります。

とは言え、この話は農業に詳しい人よりもアクアリウム(魚の飼育をする趣味)をする人の方が馴染みがあると思います。かくいう私も、農業を職業とする傍らアクアリウムの趣味(カクレクマノミ等の海水魚)があり、そちらの情報収集からアクアポニックスに出会ったという経緯があります。

動物の排せつ物に含まれる尿素からはアンモニアが発生します。アンモニアはそのままでは生物にとって有害な物質なのですが、窒素の元となる物質でもあります。窒素はリン酸、カリウムと共に「肥料の三要素」と呼ばれる植物栽培にとって最重要の成分です。このアンモニアを窒素に変換することを「硝化」と言い、アクアリウムでは水のろ過システム内で行われています。

硝化は2種類の微生物が行います。まずアンモニアをニトロソモナスという微生物が亜硝酸塩に変えます。この亜硝酸塩もそのままでは魚にとって有害となりますが、次にニトロバクタ―(ニトロスピラ)という微生物が亜硝酸塩から硝酸塩に変えます。これは魚にとって少量なら無害ですが、水槽内に過剰に蓄積すると有害になります。硝酸塩はこれ以上は分解されないので、何もしなければどんどん貯まってしまいます。そこでアクアリウムでは定期的な水替えをすることで解決しています。

一方のアクアポニックスでは水替えは必要ではない、というか何もしなくて良いです。
なぜなら硝酸塩とは硝酸態窒素とも呼ばれるもので、植物が窒素として吸収してくれるからです。前述の通り窒素は植物の栽培に欠かせない成分なので、成長に合わせてどんどん使われます。これにより、硝酸塩がなくなった水はそのまま魚の飼育水として再利用できます。これが「魚を飼うと野菜が育つ」、アクアポニックスの原理です。

アクアポニックスを最初に知った時、魚に餌をあげるだけで野菜ができる、何だか「風が吹けば桶屋が儲かる」みたいな話だな、と思ってしまいました(笑) でも、きちんと化学的に証明できる栽培方法なんです。
どうです? 夢がありませんか?

 

2022年01月28日

アクアポニックスについて②

アクアポニックスについての説明の第2回目ですが、まだ本題に入れません(笑)

今回は前回触れた「有機農法(有機栽培)」についてです。
まず有機農法の定義ですが、法律(有機農業の推進に関する法律)において「科学的に合成された肥料及び農薬を使用しない」及び「遺伝子組抱え技術を利用しない」こととされています。
一方で「慣行農法」とはそのような制限なく、農薬・肥料を有効に活用して持てる農地で収穫量の最大化を図る農法と言えます。前回も書きましたが、どちらが良いとかいうことはありません。

では「有機」とは何かということですが、通常は有機肥料のことを指します(「有機農薬」は一般的ではありません)。有機肥料とは生物由来の資源を原料とする肥料で、一般的には牛・豚・鶏といった動物の排せつ物から作られた堆肥をイメージされることが多いでしょう。ここで良く勘違いされがちなのですが、植物は動物の排せつ物から直接栄養を吸収できるわけではありません。動物と植物の共存の間には「微生物による分解」という作用が必要となります。

微生物が動物の排せつ物を分解することによって、植物が栄養として吸収できる状態になるので、どうしても肥料の効き方がゆっくりでかつ人にはその時期や量などをコントロールできません。一方の化学肥料はすでに植物が吸収できる状態になっているので、投与すれば直ぐに効き目が表れます。野菜の栽培には「肥料を効かせたいタイミング」があるので、化学肥料を使った方が野菜の栽培が効率的にできるわけです。

さて、以上を踏まえた上で、ここで水耕栽培について触れておきます。
水耕栽培では水を流したり溜めたりするための人工的装置が必要となります。その基本的な構造としては、野菜を植える栽培槽、液肥などを投与したりするための溶液槽、水を流すためのポンプ、水に空気を送るためのブロア(いわゆるブクブク)になります。

ここに堆肥のような固形物を入れてしまうと直ぐにポンプ等が詰まりますし、水が腐敗する原因となりますので、水溶性の化成肥料や液肥を使うことになります。水耕栽培にも使える有機肥料がない訳ではないのですが、そもそも限られた農地でより高い生産性を求めて、安くない初期投資をかけて水耕栽培を導入する以上(水耕栽培の欠点の一つ)、そこには肥料の効きが良い化成肥料が選ばれるのは当然といえば当然です。ですので、水耕栽培農家は概ね慣行農法を採用しており、「水耕栽培=慣行農法」という認識が定着しています。

 

この常識に一石を投じるのがアクアポニックスです。アクアポニックスのシステムでは微生物の働きを促す機構を含むため、水耕栽培での有機栽培を実現しています。次回はいよいよアクアポニックスについて説明します。

2022年01月27日

アクアポニックスについて①

サイトを始めるにあたり、最初のブログのテーマは「アクアポニックスについて」です。

基本的な説明は当サイトの「アクアポニックスとは」のページに記載しておりますが、アクアポニックスの知名度がまだまだ低い現状ですので、もう少し詳しく説明しようと思います。1回目の今日はアクアポニックスの前提となる「水耕栽培」についてです。

トップページで「アクアポニックスとは水産養殖(魚の養殖)と水耕栽培(土を使わずに水で野菜を育てる栽培方法)を掛け合わせた新しい生産方法です。」と書きました。野菜の栽培と聞いて一般的にイメージできるのは「土に野菜が植えられている状態」ではないでしょうか? これを「土耕栽培」と呼び、多くの農家が実践している農法で、その中で慣行農法・有機農法・自然農法などといった栽培方法で個性を出しています。

一方、子供の頃に花の球根をコップの水だけで育てた経験がある方もいるのではないでしょうか? これが「水耕栽培」であり、アクアポニックスはその一形態になります。

土耕栽培と水耕栽培の違いは利点・欠点いろいろかありますが、利点を一つ紹介すると、土耕栽培よりも野菜の成長が早くなるといわれています。その理由を簡単に説明すると、植物の成長のもとになる根の成長にとって「土の粒子」という障害物がある状態とない状態では当然周囲が水だけの「ない状態」の方が成長しやすく、その分の成長エネルギーを茎・葉・実といった可食部分に向けることができるからです。

もちろん、栽培環境の違いなどにより一概には言えませんし、多くの農家さんは「土づくり」に力を注いで素晴らしい野菜作りをしていますので、栽培方法の優劣をつける気はありません。そもそも農業は「みんな違って、みんな良い」の世界だと思っています。私などが異業種から農業の世界に入ってこれたのもそのおかげといってもいいでしょう。

少し話は逸れましたが、水耕栽培の基本的な説明は以上とします。アクアポニックスは水耕栽培で有機栽培を行っています。「有機栽培」という単語を聞いたことはあっても、農業関係者以外でその中身を知っている人は多くないのではないかと思います。それについてはまた次回に。

土耕栽培 慣行農法、有機農法(有機栽培)、自然農法 など
水耕栽培 慣行農法、有機農法(アクアポニックス
2022年01月26日