SDGsに対する私見

アクアポニックスについては主に(株)アクポニさんの広報努力によって各種メディアに取り上げられることにより、徐々にではありますが認知が広がっているように感じます。しかし、その紹介の仕方というか、切り口というか、扱われ方が「SDGsの実践のため」や「環境問題を解決するため」など、産業やビジネスではない視点を強調し過ぎていることが気になっています。

 

去年あたりから急に流行しだしたこのSDGsは、個別の目標を見る限り「まぁ、そうだよね」という内容であり、ああいうチェックリスト的で明確な目標設定は、特に受験勉強が得意な日本のエリートには受けが良いように感じます。何はともあれ現時点で「SDGsを実践していこう!(内容はよくわかんないけど)」というふんわりとした流行がある中で、そのネタを探しているメディア側とアクアポニックスの認知度を上げたいこちら側の目論見が合致した結果のことなので、ある程度は仕方のないことかもしれません。

 

SDGsは基本的には発展途上国の社会問題を扱っているものが多いことから、我が国の国内問題としてはすでに解決しているものが多いです(もちろんミクロの問題はありますが)。環境問題については、農業界ではSDGs以前から様々な方法で取り組まれています(GAPなど)。あとは「優先度と価値観」の問題と私自身は捉えています。

あらゆる国・地域・民族ごとに歴史・文化・伝統・風習などがあり、それらが現時点での国民の「常識(世論)」を作り出しています。その常識(世論)が様々な社会問題を解決する優先度を生み、価値観が解決策の違いを生みます。SDGsの諸目標は上記の通り随分と「万国共通的」ではあるけれども、やはり西欧先進国の価値観が多分に含まれていることを違和感として感じてしまいます。

 

若干SDGsに対しては批判的な物言いになってしまいましたが、私としては「基本的に悪いことは言っていないのだから、国・社会・民間、それぞれの立場で出来る範囲のことをして問題解決に繋がればよい。しかしながらSDGsに縛られすぎることによって不当な不利益を被ったり、国民の常識とはそぐわないことを押し付けられるべきではない」という考えです。

 

当HPの「社会的取組み」で当方とSDGsとの関わりについて基本的な考えを書きました。

確かにアクアポニックスという農法は他よりもSDGsとの相性は良いと思います。ただし、以前のブログにも書きましたが、あくまで私は純粋に農法としてのアクアポニックスに魅力を感じ、産業・ビジネスとしての希望を見出して起業したのであり、SDGsや環境問題からのアプローチでアクアポニックスを始めたわけではありません。つまりは、「アクアポニックスが産業として普及することにより、結果として環境問題も改善される」というのが、SDGsへのスタンスを踏まえた上での私個人の意見です。

 

ところが、世間的にはメディアの露出の仕方から、アクアポニックスがSDGsの実践や環境問題の解決策として結びつけられがちです。比較論としては間違っていないのですが、そこが行き過ぎるとこれからアクアポニックスを始めようとする人や私のようにビジネスとして成長させようとする人にとっては、チャンスになる可能性もありますが、悪影響を及ぼす可能性もあります。

この危惧が僅かながらですが表面化した実体験については、いずれ書きたいと思います。

2022年09月04日